螻蛄

螻蛄

螻蛄

工事現場でのヤクザ絡みの仲介を専門にする建設コンサルタントの二宮は腐れ縁で疫病神と罵る二蝶会の幹部桑原から二千万の約束手形の取り立てに絡むシノギを手伝わさせられる。約束手形は日本でも有数の巨大宗派・伝法宗の寺院の中でも格式のある就教寺の住職が振り出したもので、桑原は約束手形の裏事情を嗅ぎ取り、その原因となった伝法宗の寺宝「懐海聖人絵伝」という重要文化財級の絵巻物を手に入れようとしていた。ヘタレだが金に意地汚い二宮は嫌々ながらも桑原と行動をともにする。二千万のシノギは伝法宗の内輪揉めや東京のヤクザ勢羽組も絡み東京、名古屋、大阪と二人は東奔西走することになる。

疫病神シリーズの最新巻。
宗教を題材にしてるのに、教義そっちのけに現世利益のあれこれしか書かないのが黒川博行らしい。欲や弱さといった人間の駄目な部分を軸にしてるのに湿らないのは、作者が求めるエンターテイメントがどこまでも前向きなせいかも知れない。
黒川作品を読むと、転んでもただでは起きないのが人間の本質だといつも気付かせてくれる。