征服娘。

征服娘。 (スーパーダッシュ文庫)

征服娘。 (スーパーダッシュ文庫)

ドラヴィアの有力貴族コントラーリ家の末娘マリアは、弱冠十三才という年齢ながら女というだけで何もできないこの国を自らの手で征服する野望を抱いた。親友である侍女アッシャと共に、たとえ父や兄達を亡きものとしても、野望の為に突き進む事を誓うのだった。

大正野球娘。」を読む前に、神楽坂作品を読んでみようと手に取ったら、なんと一冊で完結していなかった。
続編が書かれる様子もないので、打ち切りといったところか。
確かに十三歳の少女のピカレスク物語としたら甘い展開で、期待していたのとは違っていた。
この巻で、征服者としてのマリアの決断があればよかったのにと、つい思ってしまう。
設定は十分に面白いと思うんだけどなぁ。

訪問者

訪問者

訪問者

三年前に湖で不審死を遂げた実業家朝霞千沙子が建てた館に、朝霞家の一族が集まっていた。千沙子に育てたられた映画監督峠昌彦が急死し、彼の取材で週刊誌の記者とカメラマンが訪れてくるためだった。しかし、訪問者は彼らだけでなく第ニ、第三の訪問者が訪れ、やがて館が嵐に包まれる時、死体が一つ現れる。

読んでいて思い出したのが、山口雅也の「解決ドミノ倒し」。
一幕の舞台で次々と登場人物達の設定が変わって行くところが似ていたからか。
恩田作品なら木曜組曲を思い出した。
恩田陸らしい本格ミステリーだと思う。

製鉄天使

製鉄天使

製鉄天使

80年代の始まり、鳥取県赤珠村。製鉄会社のお嬢、赤緑豆小豆は幼い頃から鉄に好かれ、鉄の武器を思うように扱っていた。
中学入学の朝、バイク屋から突然飛び出て来たバイクに跨がり学校に向かったが、春休みに因縁のあった立体駐車場にたむろする不良少女グループ「エドワード族」にリンチに会う。そのた帰りにエドワード族のオミソに教えられた〈鉄の武器屋 貴婦人と一角獣〉で、店主の暴走族「残薔薇壱輪」の元総番であり現総番の大和タケルの叔父イチから中国地方制覇の夢を聞かされ、新たな不良少女グループ「製鉄天使」の総番として「えいえんの国」へと走り出す。

赤朽葉家の伝説」の赤朽葉毛毬が命を懸けて描いた漫画のノベライズという事でいいのかな。
えいえんの国というキーワードもそう考えるとしっくりは来るんだけど、少々安っぽいか。

ランボーの詩を下敷きにしてるけど、少女漫画の永遠は、海と溶け合った太陽というより、もっと現実的で生々しい。男のロマンチシズムと真逆というか。
小豆が求める「えいえんの国」は憧れの場所じゃなく、失ったものが集まる場所のような気がする。
タケルが強さを求めて、暴走族からボクシングに移り、スミレが強さを求めて、進学校(地位でありお金)に進む事が、男子と女子の違いなんだろう。ラストに製鉄天使赤城山の黄金伝説を求めて走り出すシーンは男子になれない女子のアンビバレントな象徴のような気がしてならない。

ダブル・ジョーカー

ダブル・ジョーカー

ダブル・ジョーカー

陸軍中佐風戸哲正は、陸軍上層部の一部から反感を買っている秘密諜報機関“D機関”に対抗すべく新たな諜報機関を立ち上げる「ダブル・ジョーカー」
ロシアのスパイである従軍医師脇坂衛は、芸人を集めた慰問部隊の中にスパイ刈りの追っ手がいる事を知り先手を打つ事にする「蝿の王
無線技師高林正人は出張中の仏印で、何者かに暴行されたところを“D機関”の一員と名乗る永瀬という男に助けられ、彼に協力する事になる「仏印作戦」
ナチス国防軍情報部ヘルマン・ヴォルフ大佐は、ベルリン郊外の列車事故で死んだ日本人青年の調査から22年前の戦争で会った魔術師と呼ばれた日本人スパイに繋がる事を確信する「柩」
バードウォッチングが趣味の苦学生仲根晋吾は、ロサンゼルスでスパイ容疑で地元警察に連行されるが、地元の名士である義父に助けられ釈放される。しかし仲根こそが“D機関”のスパイであった「ブラックバード


スタイリッシュな雰囲気は変わらず、一話づつ見せ方を変えて読ませてくれるスパイ同士のコンゲーム小説。

ベストは表題作だけど、個人的に好きなのは結城の過去話らしき「柩」。
イングロリアスバスターズを思いだした。

コピーフェイスとカウンターガール

コピーフェイスとカウンターガール (ガガガ文庫)

コピーフェイスとカウンターガール (ガガガ文庫)

天体観測部の部長となった平良良平は先輩でトラブルメーカーの早川早苗が卒業してからどこか気が抜けていた。新学期、部室に早苗そっくりの妹早希が入部してくる。電話で早苗から妹は復讐が得意なカウンターガールだから気をつけろと、よくわからないアドバイスをかけられた良平だったが、ゲームにはこだわるが素直な早希と部活を楽しんでいた。ある日、親戚中が集まる会議に無理矢理連れてこられた良平は、親戚が全て自分の顔にそっくりだという事に驚く。そして親族の平良平子からこれは呪いだと聞かされるのだった。


普通の青春小説からなんだかわからない話になるところは、これぞライトノベルという感じで楽しめた。
ただカウンターガールの収まりがよかっただけにコピーフェイスの不条理さが飛んでしまった気がする。
マルコヴィッチの穴のような物語を期待したんだけどね。
でもこの後に続巻を出しているがスゴイ。

ROOM NO.1301 しょーとすとーりーず・わん

ROOM NO.1301 しょーとすとーりーず・わん (富士見ミステリー文庫)

ROOM NO.1301 しょーとすとーりーず・わん (富士見ミステリー文庫)

綾が記憶を失い別人格になる「僕と綾さんと素敵な思い出」
健一と距離を置く事になった蛍子が三条宇美に誘われスパに行く「私と宇美と豪華なお風呂」
刻也の彼女九条鈴璃の悩み「私と刻也君と素敵なタイミング」


番外編ではあるけど、奇妙な人間関係を描いている事だけを見たら、本編とそれほど変わらない。
本編だってエピソードの積み重ねで、しっかりとした縦軸があるわけでもない。
それでも綾の立ち位置や蛍子のその後、鈴璃自身の事が番外編であるというのなら、本編は健一と千夜子の物語でしかないという事なんだろう。

それはさておき、気になってた九条鈴璃の話が読めたんで、少し落ち着いた気がする。

生徒会の四散 碧陽学園生徒会議事録4

読書会、将来の夢、生徒会雑学、ラジオ、勉強会、学園祭の方針、そして深夏と真冬の転校。生徒会室だけで起きるあれやこれや。企業編もクライマックスに突入か。


モラトリアムを敢えて作り上げるという、変わらない日常をテーマにしているのに他の作品とは、アプローチが全く違うこのシリーズ。
本編のゆるゆるとしながらも時間が有限である事が語られていく感じは納得するけど、企業編はやりたい事がいまいち掴めない。
次巻で企業編に関してはラストみたいだけど、すっきりとまでは言わないけど狙いぐらいは理解したいな。