英雄の書
- 作者: 宮部みゆき
- 出版社/メーカー: 毎日新聞社
- 発売日: 2009/02/14
- メディア: 単行本
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小学五年生の森崎友理子は、担任教師から急に呼び出された。言われた通り帰宅すると両親から中学2年生の兄、大樹がクラスメイト2人を刺して姿を消した事を聞かされる。家族が混乱する中、友理子は兄が得体の知れないモノと一緒にいる夢を見る。不思議な夢の中で歌われた歌を兄の部屋で口ずさむと、本棚にあった赤い本が突然喋りだした。赤い本によると大樹は、英雄に取り憑かれと言う。兄を助けたいと願う友理子は赤い本が元々いた大叔父水内一郎の別荘の図書室に向かい、そこで友理子は赤い本がアジェという名の辞書で、英雄の書の写本「エルムの書」に取り憑かれた大樹が最後の器となり英雄が復活、それは人間が解釈する事によって成立する世界『輪(サークル)』をやがて崩壊させると聞かされる。英雄の物語を回収し、大樹を助けるために物語の源泉「無名の地」に向かい、そこで友理子は英雄に対抗する印を戴く者「オルキャスト」としてユーリと名を授かり、ハツカネズミの姿となったアジェ、なりそこないの無名僧ソラ、英雄を狩る「狼」アッシュとともに、「エルムの書」が生まれた物語の世界「ヘイトランド」へ旅立つ。
一気読み。さすが宮部みゆき。語りかける文体は凄いの一言。
物語に生きるのではなく、物語を生きるのだという強いメッセージが残る。
ただ最後が納得できない。
村上春樹の「1Q84」で語られたような実存としての世界をサークルと考えるなら、兄がいなくなった世界も地続きとして認められるのか。
もう少し考えてみるか。