f植物園の巣穴

f植物園の巣穴

f植物園の巣穴

旅先で痛んだ歯を治すために近所の歯医者に向かったf植物園の園丁である主人公。よくわからない治療を受け、代金を払おうとすると、何故か犬が働いている。歯医者が言うには、それは家内で、忙しくなると前世の姿である犬に戻るらしい。帰りに食堂に寄ると、千代という名前の女給に会い、主人公は幼い頃に家で働いていて、いつのまにかいなくなった同じ名のねえやを思い出す。しかも千代という名は主人公の死んだ妻の名前でもあった。ある時、主人公は身の廻りで起きる奇妙な出来事の始まりが植物園にある樫の大木の大きなうろの中に落ちた時からだと気付く。

近代文学のようでSFのようでなんとも掴みづらいところが魅力の梨木香歩の最新作。
泉鏡花のような怪異譚として最初は読んでたんだけど、中盤からインナースペースになって、最後にはパラレルワールドSFとして読み終えた。
読者によっては何重にも読める作品だけに、その振り回され感を楽しまないと置いてきぼりにされて終わってしまうかも。
秋に読んだんで、ついつい秋海棠の花を探してしまった。いざ探してみるとよく見る花だった。
この話も、そういう話だったような気がした。