不連続の世界

不連続の世界

不連続の世界

音楽プロデューサーの多聞は二重生活をする売れっ子放送作家の不思議な夢の内容を聞いたあと、川べりのケヤキの上にボロを纏った男を見る。一緒に目撃した地元の少年は木守り男を見ると東京が火の海になるという「木守り男」

地方ラジオ局で流された女性ギタリスト〈セイレン〉の歌を聴いたら人が死ぬ。そんな都市伝説じみた話に興味をもった多聞は友人のロバートとともにそのラジオ局のDJから聞いた手掛かりをもとにN市へ訪れる「悪魔を憐れむ歌」

バンドのミュージッククリップのロケハンのため、O市に着いた多聞。この町出身のバンドメンバーで、ロケを嫌がり反対していた杉原が、到着時に町を撮影していた映画のスタッフを見た途端、顔を強張らせた。それは強い恐怖の色だと多聞は悟る「幻影キネマ」

砂丘で有名なT県にある写真家Uの記念館を訪れた多聞と翻訳家の巴。巴が現在訳している科学者の随筆の中で書かれている奇妙な文章、作者は一瞬にして目の前にあった砂丘が消えたと書いてある箇所が実際ありえるのか確かめに来たのだが、記念館でまた別の消失事件に出くわしてしまう「砂丘ピクニック」

香川まで夜行列車に乗りうどんを食べに行く目的で集まった多聞達男4人。朝まで怪談をしようというのだが多聞の口をついたのは妻であるジャンヌの不可解な行動だった「夜明けのガスパール


恩田陸らしさに溢れたホラー調の短編集。
現実と幻想が等価値で置かれている世界。ミステリーを期待するとはぐらかされ、ファンタジーを期待すると地に足を着かされる。
主人公塚崎多聞が登場する前作「月の裏側」が好きな人は楽しめるのでは。