ぶよぶよカルテット

ぶよぶよカルテット (一迅社文庫 み 1-1)

ぶよぶよカルテット (一迅社文庫 み 1-1)

校内で変人として有名な先輩音城トリル。サティに心酔し山高帽を被るそんなトリルに目をつけられた地梨琢己はピアニカのような楽器アンデスを渡され、一緒に演奏をさせられるはめに。幼い頃に音楽を辞めた琢己は煩わしく思うも、トリルの天才的な音楽性と奇抜な個性に惹かれていくが、ある日トリルの親友、光真里亞から、琢己のクラスメイトであり音楽を辞める原因となった七瀬凜音がトリルの妹と聞かされ衝撃を受ける。

音楽を家具だと言い切るサティをテーマに持ってくる作者の意気込みは買いたい。だって人に感動を与えてこそ音楽と信じる凜音の方が物語になるもの。ラブコメ展開は王道だけど変化球なテーマが面白い一冊。

読了後、ジムノペディの作曲家としか知らないサティ本人に興味が移ってしまい、図書館で資料を漁ってしまった。作中の説明通りの人だったみたいで、数あるエピソードの中でもサティの死後に知人が部屋に訪れると2台のグランドピアノのうち1台は空でその中に大量の自分宛てに書いた手紙が詰まっていたという話が凄かった。
こんな事実は小説より奇なりを地で行くような人がいると作家は辛いね。