廃墟建築士

廃墟建築士

廃墟建築士

七階を撤去するから十階に移ってくれと役所の人間に通達された森崎。市内の建物の七階で次々と事件が起きているためだと説明されるが、全く意味が分からない。建物違いではあるが、同じ七階に住んでいる職場の並川に相談すると、これから決起集会があるからと誘われ、状況が把握出来ないまま七階護持闘争に巻き込まれる「七階闘争」

ベテラン廃墟建築士の関川は弟子である鶴崎が作り上げた国家プロジェクト規模の壮大な廃墟の完成パーティーに呼ばれた。老いによる諦念めいた自分の嫉妬に辟易する関川だったが、以前雑誌のインタビューで会った若い女性から自分の田舎にあった懐かしい廃墟の話を聞かされる。それは関川の師匠が最後に作り上げた廃墟だった「廃墟建築士

ハヤカワプランニングの日野原は、地方都市の図書館で夜間開館を行うために調教師として訪れる。過去に野性だった図書館は夜に無人になると蔵書達が宙を飛び動き出す。頭で描いたイメージを固定化する能力を持つ日野原は蔵書の意識を操り段階的に調教するのだが…「図書館」

自意識に悩む蔵は守り続ける事の意味を鳥のミサゴ相手にひとりごち、自身の仕事に自負を持つ蔵守はマニュアルを遵守する若い蔵守見習いに戸惑う。お互い意思疎通の出来ない蔵と蔵守ではあるが、知らず共感し合い、やがて自らの使命に気付くなか、とうとう略奪者が現れる「蔵守」

筒井康隆を彷彿させる不条理短編4編。
違うのは三崎亜記特有の蛇足部分。
このために筒井流のキレのある短編には仕上がらないが、なんとも言えない余韻が溢れる。
この無駄な感覚を楽しめる人にはオススメ。
個人的ベストは蔵守。毛色の変わった相棒小説。変わり過ぎだけど。