オリンピックの身代金

オリンピックの身代金

オリンピックの身代金

昭和39年8月。オリンピック警備のトップに就く程の警察官僚の次男でありながら実家の堅苦しさに辟易していた須賀忠は、東大を卒業した後もまだ始まったばかりのテレビ放送局に就職を決め、軽い身分を謳歌していた。
秋田から上京し東大の大学院で学んでいる島崎国男は、オリンピック建設の出稼ぎの最中に死んだ兄の葬儀に向かう為、兄の職場である飯場を訪れ、高度成長した東京の現実を目の当たりにして愕然とする。
オリンピックの開会式が出産予定の妻を持つ捜査一課の刑事落合昌夫ら5係は、課長から極秘裏に集められ、立て続けに起きている警察関連施設の爆破事件がオリンピック開催を人質に取ったテロリストの犯罪だと聞かされる。


傑作。偶然の積み重なりが、やがて一つの犯罪となるドラマに没頭した。
オリンピックを身代金に体制に勝負を挑んだ犯人の思いと、人の信念が犯罪の動機となり得る時代ではなくなったはずの現代がなぜか重なり合う。
退屈な日常をなんでもいいから打破したいと思っている人達に是非読んでもらいたい。
天皇制を隷属側のモラトリアム機構と看破する目線が秀逸。