仮装儀礼

仮想儀礼〈上〉

仮想儀礼〈上〉

仮想儀礼〈下〉

仮想儀礼〈下〉

五千枚のゲームブックを完成させるために都庁の中間管理職を辞めた鈴木正彦は、出版社の裏切りにあい何もかもを失ってしまう。ある夜担当編集者だった矢口と出くわした正彦は奇妙な共同生活の中、自身のゲームブックを教義にして宗教ビジネスを始める事を決める。

元都庁の中間管理職という設定がいい。教祖なのに神秘主義にも走らず、金儲けの為といっても悲人道的な事にも手をつけない。
バランスがいいというよりも小心者が教祖を始めたという感覚がおもしろい。
理性が信仰に飲み込まれる悲劇を描きながら、どこか喜劇的な要素があるのは桐生慧海こと鈴木と相棒矢口のどうしようもない小市民的な部分に共感するからだろう。

カルトをこの視点で読まされたのは初めて。傑作。