ステーションの奥の奥
- 作者: 山口雅也
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2006/11/09
- メディア: 単行本
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なるほど、「生ける屍の死」の作者らしい本格ミステリ。
以下ネタバレ。
要は吸血鬼の存在を、良しとするかしないか。
本格ファンなら、密室の謎が解かれる段階で、吸血鬼の存在が明らかになるわけだから、それはずっこいよ、と言いたくもなる。
まあ、炯眼な読者なら駅長の帽子の謎で、解る人もいるだろうけど、まあ普通は解らないと思う。
叙述トリックだとしても、導かれる解が吸血鬼ありの世界というのは、ハードルが高いような気もする。
と、いちゃもんめいた事を言ってみたが、逆に山口雅也の企みは、ここにあるのではないかと思いつく。
子供でなければ、解けないミステリ。
それを狙ったのではないのだろうか。
大人的な常識を逆手にとり、子供的な空想力を引き込む、そんな物語を、ミステリーランドという叢書の中で目指したのではないか。
もちろん今も昔も、小学生、特に作中の主人公達の年齢なら、現実のままならなさを理解しているし、ご都合主義な虚構も見抜いている。
だからこそ、あえて現実的な解決に落とさず、現実と虚構の間に引かれている線を、更なる虚構で上書きする、そんな作品を子供達に差し出したのではないだろうか。
また大人達にも、フェアだ、アンフェアだとわぁわぁ言ってるんじゃなく、読書の物差しは、そんなところにはないって事を伝えたかったのかもしれない。
ま、そんな事を読んでから思った訳だけど、かなり私情がまじった深読みになってしまった。
中高の頃、病気のように本格を読みあさってて、もう大好きで、人生変わったとか真剣に思ってた時の自分を思い出したからかもしんない。
でも、あの頃のようには読めないんだよなぁ。