ミハスの落日

ミハスの落日

ミハスの落日

「ミハスの落日」
表題作ながらもっともシンプルな作品。最近では見ないテーマで、密室を扱っているなと思って読んでいたら、10年前の発表だった。「後期クイーン問題」も一昔前か。と、なぜか遠い目をしてみたり。

ストックホルムの埋み火」
ストーカーと刑事の2視点の警察小説。解決してからが真骨頂。ラストは映画好きにはニヤリとさせられる。

「サンフランシスコの深い闇」
スラング混じりの軽調な会話文体と真相の落差がなんともいえない。

ジャカルタの黎明」
殺人鬼の動機がこの作者らしい尖ったもので、澱のように心に残る。

「カイロの残照」
罪と罰というテーマで言うなら、表題作と重なるかも。観念的か感情的か。

総じて読みやすい作品ばかりで、内容も手堅く、読みごたえのあるトラベルミステリーだと思う。
一方で発表順に並んでいるため、作者の10年間の軌跡も感じられ、貫井徳郎ファンにとっては、なるほどと頷かせられる作品集に仕上がっているのでは。