ハーモニー

ハーモニー (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)

ハーモニー (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)

21世紀後半、〈大災禍〉と呼ばれる核と虐殺の時代を経て、蔓延した放射能の危機に対抗すべく人類は医療経済が中心となった福祉厚生社会へと移転した。人々は個人用医療薬精製システムを体内に持ち、WatchMeという恒常的な監視システムであらゆる病気を廃除していた。世界保健機構の一部局「螺旋監察官事務局」の上級監察官霧慧トァンは日本で久しぶりにあった幼い頃からの友人零下堂キァンと食事中、目の前でキァンに自殺される。後になり同じ時刻に世界中で6000人の自殺者が現れた事を知ったトァンは、事件の裏に幼い頃、健康が賞賛される世界を憎み一緒に死を誓い、一人だけ死んでいった御冷ミァハの存在を感じるようになる。

最高傑作。

多感な時期(誰もが通る世界と私について考える時期)にエヴァ攻殻機動隊にハマった僕にはどストライクな物語。

ミームを伝える為に不完全になる生体系である人間を逆手にとった、意識がない生物としての人間が世界を支配(存在?)するディストピア
最後までドキドキを失う事なく一気に読み切った。
このディストピアを説明するまでのプレゼンテーションの技に痺れる。
小説の醍醐味というか、物語の豊饒さというか、何もかもが素晴らしい。

なのに!

人が死んでしまう存在という事に痛切な悔しさを覚える。

1ページ目から始まるプログラムを摸した括弧付きの文章で敬遠した文系読者は、最期まで読むことをオススメする。
これは文系な僕たちの物語だ。