風が強く吹いている

風が強く吹いている (新潮文庫)

風が強く吹いている (新潮文庫)

万引きをして逃げていた蔵原走は、追ってきた同じ寛政大学の先輩清瀬灰二に竹青荘を紹介され、個性豊かな住人達と一緒に住む事になる。走の歓迎会で突然灰二が竹青荘の十人で箱根駅伝に出て、頂点を目指そうと宣言した。運動経験すらない住人もいる竹青荘でそれは無茶苦茶だという中、灰二の強権で住人達は練習を始める。高校時代に走る事は好きなのに走らされる事が苦痛になり陸上部で問題を起こした走は納得行かないまま、なし崩し的に箱根駅伝を目指す事になった。


丹念な取材と作家の妄想がぶつかり合い昇華した美しい青春小説。
こういう事が現実で起きて欲しいというか、起きてもおかしくないんじゃないかと思えるほど箱根駅伝の魅力に溢れた一冊だった。
竹青荘の住人それぞれのエピソードが丹念に描かれ、それがほんと普通の大学生なのがいい。好きなものはあるけど、それで何かをなす訳でもない。モラトリアムを謳歌したいと思いながらも将来の不安を考えてしまう。そんな普通の大学生が箱根駅伝を走っている事を改めて確認させてくれた気がする。
来年の箱根駅伝が楽しみ。