聖家族

聖家族

聖家族

異能の者を輩出しつづける青森の名家・狗塚家。平成X年現在、孫たちは三人。半ば人ならざる存在の長男・牛一郎。死刑囚となった次男・羊二郎。胎児と交信する妹・カナリア。「異能の者」とは何か?「天狗」とは?「家族」とは?「故郷」とは?「日本」とは?排除され流亡せざるをえなかった者たちが、本州の果て・東北の地で七百年にわたり繋いで来た「血」と「記憶」。生の呪縛と未来という祝福を描く、異形の超大作。
《帯のあらすじめいたものより》

膨大な知識と圧倒的な妄想が何層も積み重ねられた東北史。
読んだ事ないけど東日流外三郡誌も、この妄想っぷりには霞むんじゃないかな。
兄弟の東北南進もしくはラーメン食べ歩きを軸に、町起こしとして平成元年を繰り返す白石。廻りを囲む水路を山手線に対応させる八郎潟。巨大な目のモニュメントのもと新興宗教の盛衰を語る郡山といったエピソードが挟まり、拳を武器にした兄弟が起こす逃走劇が終わったかと思うと、一転して「見えない大学」で教鞭を執る教授がもう一つの東北史を語る。しかしこれだけの内容が続いてまだ半分にしかならないのだから粗筋なんて書ける訳がない。
始めは物語の縦軸かと思っていた筋があっさりと横軸に代わり、横軸でしかなった挿話が縦軸として物語を引っ張る。
全てのエピソードはバラバラなのに、何故か全てが繋がっているように思えてしまうから、途中で読む事を放棄できなくなる。
読了した時は心身ともに疲れきった。こんな読書は久しぶり。
まさにメガノベルの異名に値する大長編。