臨床真理

臨床真理 (このミス大賞受賞作)

臨床真理 (このミス大賞受賞作)

臨床心理士の佐久間美帆が担当した患者藤木司は同じ福祉施設にいた水野彩の自殺で問題を起こし心を閉ざしていた。司は彩は自殺していないと訴える。その理由は自分は人の感情を色にして見分けがつくからだと言うのだ。美帆も初めは幻覚だと一蹴するが、司の目に死んだ弟の陰を見てしまう。治療のためと彩の事件を調べる事にした美帆は、友人の警察官栗原に助けを求める。

手堅いがどこか締まらないサスペンス。
司の特殊能力が物語にそれほど結び付いていないからだと思う。せっかく色でしか読み取れない設定なんだから、そこを上手く使って欲しかった。あと選評で言われていた一辺倒な犯人像は、選評に書かれているほど拙くはないと思う。ただ犯人の見せ方はいろいろあったんじゃないかな、と。
後半のねちっこい悪意の描き方は嫌いじゃないんで、次は付け焼き刃じゃない物語を背負わせられた犯人側のサスペンスを期待したい。たぶん、そっちの資質は高いと思うんで。