傍聞き

傍聞き

傍聞き

元受刑者の更正保護施設を営む結子は、事故を起こした罪の意識を拭えないで死を望む碓井や軽い窃盗を繰り返す佐藤に対して自身の無力さを感じ始めていた。やっと碓井の就職が決まるのだが、結子は心配でならない「迷い箱」

消防司令補諸上の部下三笠は息子を亡くして自信を喪失、なんとか力になりたいと考えるなか、諸上が恋心を抱く隣に住む母子の家で出火が起きる「899」

一人娘を持つ強行犯係の刑事啓子の隣家で空き巣が入った。手口から以前自分が捕まえた横崎だと推測する。逆恨みかと不安になるなか、出所したはずの横崎から面会を求められる「傍聞き」

一週間後に結婚を迎える救急隊員の蓮崎は、隊長であり義父でもある室伏と駅前で刺された男の救助に向かうが、その男は新婦になる室伏の娘を車椅子生活に変えた男を不起訴処分にした検事だった「迷走」

山田正紀にべた誉めされた推理作家協会賞受賞の「傍聞き」を含む短編集。
伏線の張り方が丁寧でかつ優しい。いい話を読ませてもらったという読後感がなんとも気持ちいい。
横山秀夫のなかなか出ない新作を心待ちにしている人にオススメ。