猿駅/初恋

猿駅/初恋 (想像力の文学)

猿駅/初恋 (想像力の文学)

猿だらけの海辺の町で母と待ち合わせをする男が塊となった猿を叩き潰す「猿駅」
初恋の少女が俎の上に乗せられる通過儀礼のなか祭事と妄想で混沌とする「初恋」
浴槽で目が覚めると自らの大量の鼻血で身動きが取れなくなった男のやがて哀しき結末「遠き鼻血の果て」
孤児院育ちの娼婦が見つけたしあわせ「ユカ」
蚊に失った妹の面影を求める元ヤクザの顛末「か」
ヤクザになった旧友と入院した娘と妻の安否に悩むサラリーマンの現実と妄想「雨」
上司に騙され田舎の祭に参加させられてしまった童貞男の快楽と失楽「ハイマール祭」
身重の妻を抱える男が学校の中で別れた彼女と一緒にゲロと糞にまみれてはいずり回る「げろめさん」
人格が変わる病気に罹った部下の妻に性交渉を迫られる生真面目な初老の男とその家族に降り懸かった災難「羊山羊」
進化して人と見た目が変わらなくなった猿と女子高生の神戸を舞台にした逃亡劇「猿はあけぼの」

田中哲弥の妄想が十編。好きな人には堪らないがピンキリ感は否めない。
ピンは表題作2編に「遠き鼻血の果て」「か」「ハイマール祭」「げろめさん」。
キリは「猿はあけぼの」。びっくりするぐらい小説になっていない。