ジョーカー・ゲーム
- 作者: 柳広司
- 出版社/メーカー: 角川グループパブリッシング
- 発売日: 2008/08/29
- メディア: 単行本
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陸軍中野学校をモデルにしたスパイ機関ミステリ連作。スパイ小説なのに謀略小説じゃない点がミソ。
「ジョーカー・ゲーム」
柳版「盗まれた手紙」あるいは「見えない人」。
D機関の本質がトリックに集約された一篇。
「幽霊」
コン・ゲーム。犯人の名前は明かされないが、出来る人間は限られてくる。本当のゴーストは誰なのか。
「ロビンソン」
捻りに捻った脱出物。目もあてられない失敗が本当に作中の出来事だけだったのか。ロビンソン・クルーソーは父親の忠告を聞いて航海に出なければよかったのではないだろうか。
「魔都」
犯人当て。動機の歪み方と結末の歪み方が、戦争自体の歪み方に繋がる。
「XX」
不在証明。ゾルゲ事件を匂わせつつ、市井の事件に落とす展開がこの連作の本質だと改めて気付かされる。
『死ぬな。殺すな。とらわるな』結城中佐が挙げる戒律は、戦争が持つ非情と歪みへのアンチテーゼではなく、戦争を喰らい飲み込むための狂気に他ならない。
これは長編で読みたい。