ディスコ探偵水曜日

ディスコ探偵水曜日〈上〉

ディスコ探偵水曜日〈上〉

ディスコ探偵水曜日〈下〉

ディスコ探偵水曜日〈下〉

本格ミステリーが北村薫の言うように「愛」であるのなら、この作品はまぎれもなく本格ミステリーだと思う。
思うと付けてしまうのは本格好きには受けが悪い気がするからで、それは清涼院流水の呪いというか暗示・暗喩的な物事が伏線になる世界観への嫌悪みたいなのがあるからかも。
名探偵が無数にいて、解決が何度もひっくり返り、最終的には超次元な解説で幕が引かれる。
開けっ広げで騒々しい、そういう作品を本格といってしまうと、まあイメージと違うなぁ、というわけで。
でも作品を貫く「全てに意味はある」だとか、「文脈を読むな事実だけを見ろ」とか、その精神は本格だと思うし、特に歴史は変えられないけど、意識で体験は変えられるというディスコ・ウェンズデイが到達した世界は、本格ミステリーそのものな気がする。
全部を本格に繋げてしまうのは僕の勝手な気持ちで、牽強付会でしかないんだけど、でもそれこそがこの作品のテーマなんだと思う。

長い作品で、陰惨な描写はあるし、人に奨め辛い厄介な作品だけど、読み終わると結構幸福になれるよ。