夏光

夏光

夏光

母と別れ田舎に疎開した哲彦。そこで知り合った喬史は村からスナメリに呪われた子供として忌み嫌われていた。ある日、喬史の目の中で動く青白い光に気付く「夏光」
静養のため知人の洋館に滞在する事になった石黒。訪問の際2階にいた少女を見かけるが屋敷の人間はそんな少女はいないと口を閉ざす。気になった石黒は黙って2階を探ると果たして少女と出会うがその口には大きなマスクがされていた「夜鷹の朝」
器量の良い妹に嫉妬するキミ。妹の縁談をきっかけにカフェーで知り合った都会帰りの鶴乃から教えられた呪いの儀式を始める「百焔」
大怪我をした友人・熊埜御堂の快気祝いとして鍋に誘われた長谷川。食べ残しは止めて欲しいと言う熊埜御堂は、鍋をつつきながら縁日で釣り上げた金魚に歯が生えていたという話を語り出す「は」
パイロットを夢見るマコトの友達タクの父親は落ちぶれたマジシャン。マジックの練習と称してタクを虐待している。夏休み、顔が腫れ上がったタクの耳の奥からコロコロと音がするようになると、タクの身体は宙に浮くぐらい軽くなっていた。マコト達はそのマジックに驚く「Out of This World」
タイから臓器売買のため連れて来られた子供達を見張る仕事をしているあや子は、相手の心の匂いが嗅げる。ガソリン臭い絶望の匂いを漂わせる子供達のなか、猫のように目やにを溜めたチュマーはどんなに辛く当たっても清涼な緑茶の匂いを消すことがなかった「風、檸檬、冬の終わり」


顔に纏わる叙情ホラー6編。

とにかく「夏光」が傑作。ラストの喬史が見た景色を想像するとたまらない。

えぐい話も多いけど、作者の目線が優しいので、怖いというよりも切ない。
朱川湊人が好きな人なら楽しめるのでは。