闇の子供たち

闇の子供たち (幻冬舎文庫)

闇の子供たち (幻冬舎文庫)

映画「闇の子供たち」を見て、ある登場人物の秘密がラストに明かされるんだけど、あまりに梁石日らしくない展開に眉をひそめた。
映画は映画、小説は小説なんで話が違うのは仕方がないが、この展開には心底驚いたので、この機会に読み逃していたこの本を読んでみることにしたわけだ。

納得。
梁石日がそんな展開を書くわけがない。

二つの「闇の子供たち」を比較すると梁石日阪本順治の視点が全く違っているところが面白い。
梁の主人公は福祉センターのボランティア、阪本の主人公は新聞記者。問題に対する両者の視点の違いは、そのまま背負ってきた立場の違いだと思える。
全部は無理だから手の届く範囲を助ける。
細部を犠牲にしても全部を解決しなければ意味がない。
どちらも正義でどちらもエゴだ。持てる者が持たない者に何かをしなければならないとしたら、ここまで極端にならなくてもどちらかの立場になるしかないのだろう。
後の立場でノブレスオブリージュを日本で描くには映画の主人公が言うように「見て書くしかない」とは思う。
映画の方は、言いたい事はよくわかるんだけど、とにかく気持ち悪かった。
小説の方が残酷な部分も絶望的な部分もすんなりと腑に落ちる。
好き嫌いの問題ではないはず。